編集部だより


990915 「車載領域に急速に接近するITRON活動」

 カールスルエ大学訪問団の一員として門田が同行しましたので皆さんに報告します。立場としてはある時はITRON部会員、またある時は同行記者といったところです。
 Kienckeさんは、写真のように大柄、気さく、そして気配りの人です。昼食を挟み5時間の長い会議でしたが、始終話題を提供しホスピタリティを発揮されていました。

ITRON活動は、μITRON4.0で自動車プロファイルを追加、同時に7月のOPENセミナーではトヨタ自動車からプラドにμITRON3.0準拠のRTOS搭載の発表があるなど、このところ急速に車載領域に接近している。

そのような状況下、このたび豊橋科学技術大学の高田講師、東芝田丸ITRON部会長など活動の重鎮がドイツカールスルエ大学にOSEK/VDXのリーダーであるKiencke教授を訪問した。
(写真はKiencke教授と高田講師)

OSEK/VDXは、Bosch、Siemens、Bentzなどが数年前から始めた欧州における自動車制御用RTOS、通信機能の標準化活動である。

今回の訪問は2年前の訪問、そして日本でのオープンセミナーでの教授招聘に続き、3度目の交流である。

2年前と比較しOSEK/VDXが2.0になり、実機での採用が進み、ISO化への動きが鮮明になる一方、コンシューマ領域ではデファクトの可能性も出てきたITRONが車載領域でいかなる方向性を打ち出すか興味がつきない。

会議では双方の活動紹介と協調可能なテーマの交換が行われた。テーマは二つに分類される。まず、双方に共通の話題としてデバッグインターフェイスとTTPの技術的検討、次に、補完的なコンポーネントの技術交換の検討である。具体的にはOSEK/NMやOSEK/COMはITRONに欠け、eTCP/IP、JTRON、組込み向けCORBAは、逆にOSEK/VDXに欠けており、これらが対象となる。また技術的なものではないが、コンフォーマンス認定なども議論された。

詳細はITRON部会の正式な発表を待つものとするが、確実にいえることは今後二つの標準化活動が交流を深め、協調、共通化への方向を定めたことである。

そこに見えるのはプラットフォームとしてのRTOS利用のデファクト化、車載制御分野での分散処理技術標準化ではなかろうか。また、デバイスとして、CANの強みは一層増すものと思われる。

ただ、OSEK/VDXは車載領域に特化した活動であり、幅広い活動領域を持つITRONでは、自ずから力のかけ方が違うことに一抹の不安材料が残る。言うまでもなく、これを克服し、欧州と日本から世界に通用する標準の樹立が望まれている。

OSEK/VDXはすでにISO化提案のフェーズは終え、WGが正式に形成された。一方、ITRONに関してもISO化への後押しの声が大きくなりつつある。

互いを認識する儀礼的な交流から、実質的な作業への転換には、技術的にも標準化活動としても高田講師や一部の献身的なITRONファンの活動に頼るばかりではなく、ITRON部会を構成するメーカーの更なる協力が不可欠である。さらに、現実を見据えれば、交流項目の優先順位付けが最重点課題であろう。