編集部だより


990812 組込みシステム技術に関するサマーワークショップSWEST1速報 (門田)

組込みシステム技術に関するサマーワークショップSWEST1に、EIS編集部の門田がアドバイザリとして参加しましたので読者の皆さんにご報告致します。写真などは後日掲載する予定です。

大学の先生方、研究室の学生さん、企業のエンジニアなど、第一線で働く総勢80名を越す方々がラフォーレ修善寺に集い、SWEST1が無事に終了しました。正式な報告は実行委員会から出ることになっていますが、下記は速さだけが取り柄のレポートです。

初日は13時から、高田先生の挨拶に続き、大阪工業大学の松本先生の基調講演で始まり、参加者の組込み技術、システムに対する意識をあわせを狙ったKJ法の実施、2トラックパラレル形式の一般発表セッション、懇親会を兼ねた夕食、その後再び2パラレル形式のアルコール気分を多少(多量?)ブレンドした全員参加型討論形式の分科会の組み合わせで第一日を終了しました。もちろん分科会を延長し深夜まで議論されたグループもありました。

翌日は9時より九州大学の安浦先生の基調講演、続いて2つの一般発表セッション、昼食後に再び分科会、最後は大阪大学今井先生と僭越ながら私の挨拶も含めクローズセッションを行い3時半に終了しました。(詳しくはプログラムをご参照ください)

松本先生のお話は過去のレビューを通じて現在を位置づけるオーソドックスなものでした。第一世代の組込み技術は、いわゆる制御タイプが多かったのですが、米国企業が垂直型のカストマイズを嫌い、日本が優位に立ったが、第2世代ではプラットフォーム戦略で米国が逆転した、と言った趣旨でした。そこで次はどうか、これは私の私見、感想ですが分野別のプラットフォームと機器に特化する垂直型の集積技術で再び日本にも勝機が出てきたように思えます。

一般セッションでは「設計手法」に参加し、九州システムシステム情報技術研究所の藤懸さんによる安浦先生が提唱されている専用機能を効率的に実現するLSI設計手法とモーション系ダイナミックシミュレータの組み合わせによる評価事例、高田研究室の安田さんのCPU時間の割り当てを保護するProposional Resource Share Allocation Algorithmを出発としたEarliest Projected Deadline Firstアルゴリズム、東海大学大原研究室島崎さんによるタイミングチャートを用いたデバイスドライバ設計方法論と支援ツールの発表を聞きました。

いわゆる学会の重々しい雰囲気?もなく活発な質疑がなされ、発表15分、質疑10分は短すぎると参加者の方々から声がありました。私も同感でした。内容的には、それぞれ分かり易く理解できましたが、「産業界に役立つエンジニアリング」を目指すモチベーションの不足を少々感じたことを付け加えておきます。なお島崎さんの研究内容は、来る11月に開催されるMSTの大学パビリオンにおいて公開展示される予定です。

夕食兼懇親会は例によって多くの人との出会いの場となりました。適度なアルコールによる自制心解除?の効果は絶大なようです。

我々アドバイザリは、夕食後開かれた「言いたい放題」や「テストとデバッグ」などの魅力的テーマの分科会には参加せず、すこしマネージメントにウエイトを置いた小グループを形成しました。ここで一番大きな話題の一つがネーミングでした。「組み込み」は慣用的に使われているが、本質を適切に表しているとはいえない、との松本先生の問題提起に、安浦先生がApplication Specific Computer Systemというアイディアでお応えになり、翌日、今井先生からApplicationよりDomainが適切ではないかというご意見が出ました。ネーミングについてはまだすこし議論が必要で、今後の大きな検討課題となったようです。

延長懇親会兼懇親会については報告事項はありません。

翌日の安浦先生のご研究をベースにされた「システムLSI時代の設計技術」の基調講演は、時代背景、社会的要請、構成技術とその戦略、設計教育まで触れた意欲的なお話でした。個人的には、是非こういったものを企業にお出でいただきお話し戴きたい、と思います。安浦先生の技術ゴールとアプローチが云々だけではなく、背景や社会的な自らの研究の位置づけと、研究戦略などの建て方見方を素直に学びたい気持ちです。

一般セッションでは2つのセッションをつまみ食いしたので、時間の区切りの調整などちょっと失敗しました。

北陸先端大の中島先生の留学時代からのテーマである「組み込みシステム向けのミドルウェアアーキテクチャ」について、アイシン精機浅井さんや豊田中央研究所の皆さんによるMathLab/Simlinkをベースとした「次世代ソフトウェア開発支援ツール」、松下電器、永田さんのシミュレータ、オンチップデバッグモジュールなどの組み合わせによる「マイコンソフト開発の全行程を支援するデバッグ環境」、神戸大学、四井さんほかの「組み込み用Javaシステム/Javaチップの開発」を聞きました。

中島先生の発表ではHAVi、JINIのもう一つ上のサービス階層をCORBA技術を拡張し、オブジェクト間協調動作を可能にするOSなど、多岐にわたる内容が含まれており、別途じっくりお話を聞きたいところです。浅井さんのお話も、ABSやECU実機での評価実績もあり、実用化に近いもので、2,3の改良とツールの品質を上げれば立派に商用製品として通用するレベルのものだと印象をうけました。昼食時に「すこしでも冗長が出ると現場ではなかなか受け入れてくれない・・・・」と嘆かれておられましたが、汎用製品としてみれば立派なモノでしょう。永田さんのテーマと内容は、日頃同業他社もいろいろ試みている親近感もあり、技術そのものを越えた戦略的な興味が湧きました。最後の四井さんの発表ですが、時間調整を失敗して半分しか聞けなかったのが残念です。ちょっと研究の戦略にはっきりした色が見えにくかった印象があります。

午後の分科会では大学の大御所の先生方が出席された「コデザインの現状と未来」に参加しました。ここではハード屋さん代表の高野さん、高田先生を始めソフト屋の皆さん、議論の過熱化とは的確に距離を置き米国事情と照らし合わせて評価、コメントするCQ出版の山本さん、アーキテクチャ分割までがコデザインだと明快な主張を持つNECの川口さん、自社製品をどう位置づけて生かせばよいか悩んでおられるテスコの渡辺さん、そして安浦先生、今井先生と役者は揃っていました。

まず出発時点からモデル化、仕様記述におけるイメージ、解釈がかみ合わず、複雑性の問題にぶつかり始め、解決策として完全な実装と対応する仕様記述をイメージする高野さんと、とっくの昔にその問題にあきらめをつけた?ソフト屋さんの議論がしばらく続きました。結論がでたわけではないのですが、ソフト屋はコデザインに期待するところはあまりなく、ハード設計者は複雑性を解決す補助手段として期待が大きいという印象を残しました。最後に渡辺さんがアプリケーションエンジニアリングと実装エンジニアリングに分けて考えればいいんだという趣旨の発言があり、人それぞれに納得したものはあったようです。

3時すぎて終わりの挨拶が学会、産業界それぞれからあり終了し、多くの方々は帰途につかれました。実行委員の方々と新たなる有志の方は、その後も簡単な反省とアクションアイテムのまとめをされて全日程を終了したのです。

事前準備期間3ヶ月、飛び交ったメール600通と、この企画を運営した実行委員の皆さんの熱意にただただ感謝感激です。またご発表の皆さん、そして一般参加の皆さんにも会を盛り上げていただき、感謝に堪えません。ここに厚く御礼申し上げます。

蛇足になりますが、私個人は今回のSWESTが成功であったか失敗であったかはまだ評価しておりません。この集まりは今回限りのものではなく、今後も継続して問題領域と課題を追求し、産学の交流の場あり、討論の場であり、成果の評価の場でなければならないと考えます。もちろん高田先生をはじめとする皆さんも言葉の表現としての違いはあるでしょうが、中長期の展望を描きつつの第一回であったわけです。

本来ならば、実行委員の皆さんに「大成功」と申し上げるべきなのでしょうが、年寄りの悪い癖、少し辛口の採点とさせて戴きます。

第2回、3回と会を重ねる努力の中にその達成可能性を見出せた時に初めて成功への道が拓けるのだと思います。私ももちろんアドバイザリ一員として努力することをここにお約束致します

PS;このような企画、会議には私のよき相棒として必ずお力を添えていただいた、東芝の田丸さんが、お仕事の関係で結局お見えになりませんでした。残念残念残念。