バイカル湖の民話


 N.I.エシペノク編 佐藤利郎訳
 恒文社 定価2,200円
 
古くから「シベリアの真珠」と呼ばれ親しまれてきたバイカル湖。この美しい自然は、美しい物語の宝庫でもあった。

バイカル湖畔と、アンガラ、エニセイ、レナ、ニジーニー・ツングースカ、セレンガといった大河の流れる針葉樹林・タイガや大草原・ステップ。北極海まで広がる果てしない白いツンドラの荒野。厳しいが豊かな大地で、ブリヤートやヤクート、エベンク、トファラールなどの少数民族が延々と何千年も暮らしつづけてきた。

本書第一部「湖岸の夢」は、このような大地を舞台に繰り広げられる、「バイカル伝説(神話)」の数々である。

勇士バイカルやその娘アンガラ。そして若者エニセイやイルクートらとの恋のもだえ。シベリア諸民族の口承文学の世界では、大自然そのものが物語の主人公である。

一方、工業化による汚染の進行はバイカル湖でも例外ではなかった。針葉樹林の伐採跡地が泥沼化するなどの大規模な環境破壊が進み、これによる地球環境への影響が懸念されたりしている。民衆の夢と願いがこめられ、生活の綾が織り込まれている珠玉のようなバイカルの民話は、しばしそのような現実を忘れさせてくれる。