題名:さわやかな話題--Linuxのリノスさんの話

発言者:野口壽一
投稿日:99年6月27日 16時53分09秒
リモートホスト情報:h146-038.tokyu-net.catv.ne.jp

発言内容

スマートバレージャパン(http://www.svj.or.jp/)という団体があり、そこが主催するメーリングリストに約一月前(1999年5月24日)に投稿されたメールで、とても印象深い文章がありました。僕の周囲の何人かには直接伝えたのですが、もっと多くのひとに読んでもらいたいので、メール発信者に転送許可をお願いしたところ、OKをいただきました。

筆者はエマ・クロックフォードさんというシリコンバレー在住のマネジメント・コンサルタントの方です。
テーマは、いま話題のLinuxの創始者Linus Torvalds氏の生き方に絡むものです。
私はインターネットビジネスに乗り出した最初からLinuxにはお世話になっているので特に身近に感じた、という理由もあります。

Linuxに関しては米国でLinuxサポートの専門会社レッドハットがIPOするのをめぐって日本でも議論が交わされています。246コミュニティでも議論したい興味あるテーマですが、エマさんのエッセーは、そんな議論を含め、技術や起業やビジネスを語る際にもっともベーシックな忘れてはならない観点を提示しているように思います。

前置きはこれくらいにして、本文をご紹介します。エマさんによれば、「このエッセイは北加日本商工会議所の月報に連載中の『シリコンバレー日記』の99年4月号、また同じアイディアですが、文章は違うスタイルでTechBingのコラムにだしたものを改稿したものです。」とのことです。

=====以下、転送エッセー全文============

Essay from Silicon Valley (1)
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今日は久しぶりに、古き良きバレーに触れたような爽やかなお話をご紹介したい思います。これはLinux の生みの親であるLinus Torvalds氏("リノス")が最語ったことにとても感激したものなのですが。

まずリノスの話の前にここの所のインターネット・バブル現象に少しコメントをした
いと思います。最近あるECommerceのスタートアップ会社を訪ねたのですが、そこではインド系のみるからに頭の切れそうなCEOが現われました。彼による会社紹介は、まずすでにラップトップの中に用意されている投資家むけのプレゼン資料をみせて「アマゾンはこうである、でもうちはこうだからアマゾンに投資するよりうちへ投資したほうがベターですよ。」と力説しました。当方(私とクライアント)は、あなたの会社の製品のユニークさはどこか、どうやって売り上げが増えていくのかという質問をしたのですが、この会社の製品の市場性は今一よく見えず、「どこで収入がふえていくのか。」については全く机上の空論を聞いているようだったというのが正直な感想でした。しかし、一度お金の話になるとそれはそれは快活になり、いかに投資をつのっていかに会社を大きくし、IPOをするか高く売り飛ばすか、そして(ここから先は言葉にだして言いませんでしたけれども)良いタイミングで自分の株を売って儲けよう、といった意気込みがその話の原動力として力強く伝わってきました。こうした光景をみるにつけ以前のバレーと違っていると感じてしまうのです。新しい技術により社会に役立つものを作ることを目的とした、技術屋さんたちの夢がバレー発展の原動力でした。勿論VCなどのお金の専門家たちがこうしたもの作り屋さんたちを応援してきたから会社も発展してきた訳です。でも最近はexit planばかりに注力している企業があまりに多くなってきていて本末転倒では、、と感じるのです。

そうした何となく複雑な気持ちに襲われていた時にLinus Torvalds氏と会いました。彼はフィンランド人で現在29才ですが、かねてからウインドウスは「そんなに使いやすいとは思わない」という動機で大学院の時にコツコツとコードを書いてLinuxというunixベースのOSを作ったソフトウエア・エンジニアです。彼の名Linusをもじって名づけたLinuxは世界的に有名になりましたがリノスはLinuxをpublic domainとしました。有名になった彼にはあらゆるビジネスの誘いがかかったそうで、自分の会社を始めないかとVCからも随分オファーを受けたそうです。でも今彼はサンタクララのある会社でソフトウエア・エンジニアとして静かにプログラムをかく日々を送っています。最近2人目の子(娘さん)ができてますますハッピーな
パパになったという所です。自分でビジネスを始めたければ始められたし、お金を儲けるべく動いたらいくらでも投資が集まっただろうに、どうしてそうした機会をとらなかったのですか、と聞いたら「今自分はとても面白いプログラムを任せられていて、今の仕事に満足してますし、充分な給料ももらってますから、これ以上はいらないのです。」との答えでした。「給料で充分ということですがあなたにとって充分なお金とはいくらなのですか。」「僕の妻は生活のために働く必要がありません。だから彼女が2人の子供たちの面倒をみることができます。これが自分にとっては充分なお金なのです。」といった答えを聞いた時に私は本当に忘れかけていたものをみるようでした。シリコンバレーでは夫婦でお金儲けに翻弄し、子供の世話は他人任せというご家庭が沢山います。また小学生の子供たちの間で「キミのパパの所はいつIPOするの?」などという会話もとびかっているそうです。リノスはまだフィンランドから移住して間もないですが、「僕はヨーロッパの出身です。世界には米国の、それもシリコンバレーという特殊な地域での価値観以外のヴリューをもっている人が沢山いるのです。」ということも言われました。
work hard, become richといった米国の合言葉は忘れさられ、今やinvest right, become richといった昨今のバブルの中で、ふと爽やかなものにふれた気がしました。

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エマ・クロックフォード:
シリコンバレー在住のマネジメント・コンサルタント、82年スタンフォード大大学院卒、現在、新規事業(顧客)開発、ジョイント・ベンチャー・アライアンス、企業訪問のアレンジなどの業務をを中心としている。
日米の雑誌に多数執筆。東京都出身。


 


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